事故の過失割合は誰が決める?決め方の基準と納得できない時の対抗策を徹底解説
交通事故のあと、保険会社から提示された過失割合を見て「えっ、自分がこんなに悪いの?」と納得がいかなかった経験はありませんか?
多くの方が「過失割合は警察が決めるもの」と誤解していますが、実は警察には過失割合を決める権限はありません。
では、一体誰が、どのような基準で「8対2」や「10対0」といった数字を決めているのでしょうか。
この記事では、交通事故施術の専門家である整骨院の視点から、過失割合が決まる仕組みや、提示された数字に納得がいかない場合にどう動くべきか、プロが教える「正当な権利を守るための知識」を分かりやすく解説します。
事故の過失割合は誰が決める?「警察が決める」は大きな誤解
交通事故が起きると、現場には必ず警察官が駆けつけ、現場の状況を詳しく調査します。
そのため、多くの方が「過失割合も警察が公平に決めてくれるはずだ」と考えがちですが、実はこれは大きな誤解です。
結論からお伝えすると、警察には過失割合を決定する権限は一切ありません。
警察が扱うのは刑事責任と行政責任のみ
警察の本来の役割は、あくまで公の秩序を守ることにあります。
事故現場で行われる実況見分や聞き取り調査は、主に以下の二つの責任を明確にするために行われるものです。
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危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪などの犯罪に該当するかを確認する刑事責任
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免許の点数加算や停止・取消処分を行う必要があるかを判断する行政責任
警察官に「私の過失は何割になりますか?」と尋ねても、「それは保険会社同士で話し合ってください」と返されてしまうのは、警察には民事上の金銭トラブルには介入しないという「民事不介入」の大原則があるからです。
民事上の損害賠償を決めるのは当事者同士の話し合い
では、治療費や車の修理代を誰がいくら負担するかを決める「過失割合」は誰が決めるのでしょうか。
それは、事故の当事者、およびその代理人である保険会社です。
交通事故の解決の多くは、裁判を通さずに話し合いで解決を図る「示談(じだん)」という形をとります。
示談とは、双方が事故の状況を主張し合い、納得した条件でサインを交わす「契約」の一種です。
保険会社の担当者が過去の事故事例を参考に割合を提示し、被害者と加害者の双方が同意することで、初めて過失割合が確定します。
つまり、過失割合とは法律で自動的に決まるものではなく、「当事者双方が合意した数字」であることを理解しておく必要があります。
もし一方が納得しなければ話し合いは平行線をたどり、最終的には裁判所での判断を仰ぐことになります。
過失割合を左右する過失相殺と判例タイムズの存在
保険会社が過失割合を提示する際、担当者の主観や「なんとなく」で数字を決めているわけではありません。
実は、損害保険業界には「教科書」とも呼べる共通の判定基準が存在します。
過去の膨大な裁判データが基準になる
実務において最も重視されるのが、東京地裁の裁判官などが編集に携わっている「判例タイムズ」という冊子です。
ここには、過去に起きた膨大な数の裁判例がパターン化されており、「交差点での右直事故」「信号機のない交差点での事故」といったシチュエーションごとに、基本となる過失割合が細かく記載されています。
保険会社の担当者は、事故の状況をこの冊子の図解に当てはめ、まずはベースとなる数字(基本過失割合)を導き出します。
このように、客観的な「過去の裁判結果」を土台にすることで、担当者によって判断が大きくブレることを防いでいます。
基本過失に状況を付け足す修正要素の仕組み
事故はどれ一つとして同じ状況ではありません。
そのため、判例タイムズの基本割合をベースに、個別の事情を加味して数字を微調整していきます。これを修正要素と呼びます。
例えば、以下のような要素が過失割合を数%から十数%変化させます。
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15km/h以上の速度超過があった場合
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夜間で視界が悪かった場合
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相手が子供や高齢者だった場合
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合図(ウィンカー)を出さずに曲がった場合
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酒気帯び運転などの著しい過失があった場合
このように、基本の割合に対して「自分側や相手側にどのような落ち度があったか」を足し引きすることで、最終的な「8対2」や「7対3」といった数字が決まっていきます。
つまり、過失割合を有利にするためには、この修正要素に該当する事実をいかに証明できるかが極めて重要になります。
保険会社同士の交渉で過失割合が決まっていくプロセス
事故の当事者が任意保険に加入している場合、多くは保険会社の担当者が「代理人」として相手方の保険会社と交渉を進めます。
私たちが直接相手と話し合う必要がないのは助かりますが、その裏側でどのような話し合いが行われているのかを知っておくことは大切です。
担当者が事故状況をヒアリングして基準に当てはめる
まず、双方の保険担当者はそれぞれの契約者から事故がどのように起きたかを詳しく聞き取ります。
現場の状況、車の傷の位置、当事者の証言などを照らし合わせ、先述した判例タイムズなどの基準に当てはめていきます。
この段階では、お互いの保険会社が基本的にはこれくらいの割合が妥当ではないかという案を出し合います。
双方が同じ認識であればスムーズですが、主張が食い違う場合は、現場の図面を書き起こしたり、損傷箇所を分析したりしながら妥協点を探っていくことになります。
保険会社が早期解決を優先して提示してくるケース
保険会社にとっての優先事項は、もちろん契約者の利益を守ることですが、同時に事故対応を迅速に完了させることも含まれます。
交渉が長引けばそれだけ人件費などのコストがかかるため、時には早期解決のための譲歩が提案されることがあります。
例えば、本当は9対1が妥当なケースでも、相手方が頑なに非を認めない場合、これ以上の交渉は時間がかかるという判断から「早期解決のために8対2で示談しませんか」といった打診がなされることがあります。
もちろん、納得できれば問題ありませんが、少しでも不公平感がある場合は安易に同意せず、自分の主張を裏付ける根拠をしっかり伝える姿勢が求められます。
最終的な決定権はどこにある?納得できない場合の着地点
保険会社から提示された数字にどうしても納得がいかず、話し合いが平行線をたどってしまった場合、最終的な決定権は一体どこにあるのでしょうか。
話し合いがまとまらない際の「着地点」には、大きく分けて三つの段階があります。
双方の妥協点を見つける「示談」での解決
交通事故の解決の約9割以上は、この「示談」という形をとります。
示談はあくまで当事者、およびその代理人である保険会社同士の合意に基づく契約です。
一方が「絶対にこの割合は認めない」と主張し続けている限り、示談は成立しません。
しかし、多くの場合は裁判にかかる時間や労力を考慮し、どこかで双方が折り合いをつけて合意に至るのが一般的です。
公正な第三者が仲裁する「ADR」の活用
自分たちだけでは話が進まないけれど、裁判までは大ごとにしたくないという場合に有効なのが、裁判外紛争解決手続き(ADR)です。
交通事故紛争処理センターなどの専門機関では、中立な立場の弁護士が間に入り、法律や過去の判例に基づいた妥当な案を提示してくれます。
ここで示された内容に双方が納得すれば、それが最終的な着地点となります。
裁判よりも迅速で、かつ専門的な判断が仰げるため、非常に価値のある選択肢です。
最終的な審判を下す「裁判所」の判決
あらゆる話し合いが不調に終わった場合、最後にバトンを受け取るのが裁判所です。
裁判になれば、裁判官が提出された証拠を精査し、法律に照らして最終的な過失割合を確定させます。
裁判所の判決は絶対的な強制力を持っており、これが文字通りの「最終決定」となります。
ただし、解決までに半年から一年以上の長い月日が必要となるため、まさに「伝家の宝刀」とも言える最終手段となります。
提示された過失割合を覆すために必要な客観的な証拠
保険会社から提示された過失割合に対して、ただ「納得がいかない」「自分はもっと悪くないはずだ」と感情的に訴えるだけでは、一度決まりかけた流れを変えるのは困難です。
相手や保険会社、さらには裁判所を納得させるためには、自分の主張を裏付ける客観的な証拠を提示しなければなりません。
事故の瞬間を記録したドライブレコーダーの映像
現代の事故解決において、最も強力な証拠となるのがドライブレコーダーの映像です。
信号の色、一時停止をしっかり守ったか、相手がどれほどの速度で突っ込んできたかなど、言葉では伝えきれない事実を一目で証明してくれます。
「相手が急に割り込んできた」といった主張も、映像があれば過失割合を大きく有利に修正できる可能性が飛躍的に高まります。
警察が作成する実況見分調書
警察は過失割合を決めませんが、事故現場で作成する実況見分調書は、道路の状況や車両の傷、ブレーキ痕などを詳細に記録した公的な資料です。
この調書は、事故の客観的状況を証明する上で非常に高い信頼性を持っています。
保険会社の提示内容が実際の現場状況と矛盾していると感じる場合、この調書の内容を精査することで、見落とされていた修正要素を見つけ出すきっかけになります。
第三者の目撃証言や付近の防犯カメラ
自分の車にドライブレコーダーがない場合でも、諦める必要はありません。
事故現場の近くにあるコンビニや駐車場の防犯カメラに、事故の様子が記録されていることがあります。
また、事故を直接見ていた第三者の目撃証言も、当事者同士の言い分が食い違う際の重要な判断材料となります。
ただし、これらは時間の経過とともにデータの消去や記憶の風化が進んでしまうため、事故後できるだけ早い段階で確認しておくことが重要です。
過失割合で揉めると治療にどう影響するか
過失割合の話し合いが難航し、お互いの主張がぶつかり合ってストレスが溜まる状況は、実はお体の回復にとって大きなマイナス要因となります。
なぜ事務的なトラブルが体の痛みにまで影響を及ぼすのか、その理由を知っておくことは非常に重要です。
精神的なストレスが痛みを長引かせる
「自分は悪くないのに、なぜ相手は認めないのか」という強い怒りや不安は、交感神経を過度に刺激し、筋肉を無意識に緊張させます。特に追突事故などで傷めた首や肩の筋肉は、ストレスによってさらに硬くなり、血流が悪化してしまいます。
その結果、本来であれば数週間で引くはずの炎症が長引いたり、頭痛やめまいといった自律神経症状が強く出たりすることも珍しくありません。お体の回復を最優先にするなら、まずは心理的な負担を減らし、リラックスして施術を受けられる環境を作ることが大切です。
治療費の支払いがストップするリスク
過失割合で激しく揉めていると、相手方の保険会社が「過失が確定するまで治療費の支払いを保留する」と言い出したり、早期に治療の打ち切りを打診してきたりすることがあります。
しかし、ここで通院を諦めてはいけません。
たとえ過失割合が確定していなくても、人身事故として処理されていれば、相手方の自賠責保険(上限120万円)から治療費の支払いを受けることが可能です。
また、ご自身が加入している任意保険の「人身傷害補償保険」などの特約を活用すれば、過失割合に関係なく、自分の保険から治療費をカバーできるケースもあります。
まとめ:納得のいく解決のために、冷静な知識と専門家のサポートを
交通事故の過失割合は、警察が自動的に決めるものではなく、過去の膨大なデータを基準に、当事者や保険会社が話し合って合意するものです。
提示された数字に疑問を感じた際は、それがどの基準に基づいているのか、修正要素は正しく反映されているかを冷静に確認することが大切です。
過失割合の問題は複雑ですが、正しい知識と証拠があれば、正当な主張を認めてもらうことは可能です。
そして何より、事故の解決とは「元の元気な体に戻ること」までを含みます。
事務的な手続きでお悩みの方も、お体の痛みでお困りの方も、交通事故の専門知識を持つ当院へぜひご相談ください。
私たちが、あなたの心と体の両面から全力でサポートいたします。




