事故保険の二重取りでお悩みではないですか?

交通事故に遭った際、複数の保険から給付金や賠償金を受け取ることができるのか、二重取りをすると犯罪になってしまうのではないかと不安になる方は少なくありません。

結論から言うと、実際の損害額を超える二重取りは法律や保険のルール上認められませんが、保険の種類や仕組みによっては合法的に両方から給付を受け取れるケースが存在します。

しかし、誤った認識で重複請求をしてしまうと保険会社とトラブルになったり、詐欺罪に問われたりするリスクもあります。

この記事では、事故保険の二重取りにおける違法性の基準や併給可能な保険の種類、労災保険との調整ルールについて分かりやすく解説します。

正しい知識を身につけて、損をせず安全に補償を受け取るための参考にしてください。

事故保険の二重取りは違法?基本的なルールと仕組み

交通事故における事故保険の二重取りは、原則として実際の損害額を超えて受け取ることは禁じられています。

損害保険には利得禁止の原則があり、実損以上の補償を得て不当に利益を得ることは法律や約款上認められていません。

故意に二重請求を行った場合、不正受給や詐欺罪に問われる危険性もあります。

ここでは、保険における二重取りの定義や法律上の扱いについて詳しく解説します。

損害保険における利得禁止の原則とは

損害保険には利得禁止の原則と呼ばれる根本的なルールが存在します。

利得禁止の原則とは、保険事故によって被保険者が実際の損害額を超えて利益を得てはならないという考え方です。

事故保険は、被保険者が被った実際の損失を穴埋めして事故前の状態に戻すことを目的として設計されています。

そのため、もし事故によって実際の損害よりも多くの保険金を受け取れてしまうと、保険が不当な利益を得る手段になりかねません。

このような事態を防ぐため、保険法や各保険会社の約款において、二重請求や実損を超える給付が厳しく制限されています。

損害額が50万円であるにもかかわらず、複数の保険から重複して50万円ずつ受け取り、合計100万円を得るような行為は、この利得禁止の原則に反することになります。

交通事故の補償を受ける際は、まず自分が加入している保険や相手方の保険の性質を正しく理解しておくことが重要です。

事故保険の二重取りが認められない理由と損害額の上限

交通事故で被った損害に対して、複数の保険から二重取りをすることが認められない最大の理由は、損害賠償の不当な二重支払いを防ぐためです。

被害者が受け取る補償金の合計額は、治療費や慰謝料や休業損害などを合算した実際の損害額が上限となります。

例えば、相手方の自賠責保険や任意保険から治療費や慰謝料の全額支払いを受けた場合、同一の損害項目について自身の加入する人身傷害保険などに再度全額を請求することはできません。

保険会社同士は情報共有を行っており、既に他の保険から支払いが行われている場合は、その金額が差し引かれて支給される仕組みになっています。

ただし、損害額の全額が相手方の保険だけで補償しきれないケースもあります。

相手方が無保険であったり、過失割合によって賠償金が相殺されたりした場合には、不足している損害額の範囲内に限り、自身の保険から給付を受けることが可能です。

どのような場合であっても、最終的に手元に入る金額が実際の損害額を超えないように調整される点に注意が必要です。

虚偽請求による事故保険の二重取りに潜む詐欺罪のリスク

既に他の保険会社から保険金を受け取っている事実を隠し、意図的に別の保険会社へ同じ損害を請求する行為は極めて危険です。

このような故意による二重請求は、単なる手続き上の不備にとどまらず、保険金をだまし取る不当利得や詐欺罪に該当する可能性が高まります。

刑法上の詐欺罪が成立した場合、10年以下の懲役という厳しい罰則が科されることになります。

保険会社は事故データの照会システムや損害調査のネットワークを活用して、重複請求や不正請求がないかを厳重にチェックしています。

後から重複受給が発覚した場合には、受け取った保険金の返還を求められるだけでなく、保険契約の解除や警察への被害届提出に発展するケースもあります。

うっかり確認漏れで二重請求になってしまった場合でも、大きなトラブルの原因となります。

重複して請求できる保険かどうか疑問に思った際は、請求手続きを進める前に必ず担当の保険会社や専門家に確認をとるようにしましょう。

併給可能!交通事故で併せて受け取れる保険の種類

実損補償の保険では二重取りができませんが、定額払いの生命保険や傷害保険などは事故保険と併せて受け取ることができます。

契約内容によって併給できる保険を正しく把握することが重要です。

ここでは、交通事故の賠償金と同時に受け取れる保険の種類について詳しく解説します。

自身の生命保険や医療保険の入院・通院給付金

ご自身で加入している生命保険や医療保険から支払われる入院給付金や通院給付金は、交通事故の賠償金と併せて受け取ることが可能です。

生命保険や医療保険は、実際の損害額を穴埋めする損害保険とは異なり、あらかじめ契約で決められた金額が支払われる定額保険に分類されます。

定額保険は被保険者の生命や身体の損害に対して契約通りの金額を支払う仕組みであるため、利得禁止の原則が適用されません。

そのため、相手方の自賠責保険や任意保険から治療費や慰謝料を満額受け取っていたとしても、それとは別に自身の生命保険会社へ給付金を請求することができます。

事故によるケガで入院や通院をした場合、給付金の受給によって相手方からの賠償金が減額されることもありません。

自身が加入している医療保険や共済の保障内容を確認し、請求漏れがないよう手続きを行うことが大切です。

個人賠償責任保険や傷害保険の定額給付特約

怪我に備える傷害保険や各種共済、クレジットカードの付帯保険などで定額給付の特約がついている場合も、賠償金との併用が認められます。

例えば、通院1日につき5,000円が支払われる通院特約や、骨折などの特定の怪我に対して一律で支給される特定損傷特約などがこれに該当します。

これらの定額給付特約も生命保険と同様に契約に基づいた一定額が支払われるため、相手方からの賠償金と重なっても二重取り(不正受給)にはなりません。

ただし、傷害保険の中にも実損補償タイプ(実際にかかった治療費の分だけを支払うタイプ)の商品が存在するため注意が必要です。

実損補償タイプの場合は、相手方の保険から治療費が支払われていると二重に受け取ることはできません。

手持ちの保険が定額払いタイプか実損補償タイプかを保険証券や約款で確認しておくことが重要です。

搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いと併用の扱い

自身が契約している自動車保険に含まれる人身傷害保険と搭乗者傷害保険は、どちらも事故時の怪我を補償するものですが性質が大きく異なります。

人身傷害保険は、実際の損害額(治療費や休業損害や慰謝料など)を基準にして保険金が算出される実損補償型の保険です。

そのため、相手方の保険から十分な損害賠償を受けた場合、同じ損害項目について人身傷害保険から重複して受け取ることはできません。

一方で搭乗者傷害保険は、事故によって入院や通院をした際に、あらかじめ設定された定額の保険金(部位症状別払いや日額払いなど)が支払われる定額給付型の保険です。

したがって、搭乗者傷害保険は相手方からの損害賠償金や人身傷害保険の保険金と併せて受け取ることができます。

自動車保険で両方の補償をセットしている場合は、人身傷害保険で実際の損害をカバーしつつ、搭乗者傷害保険から定額給付金を受け取るという形が合法的に可能です。

労災保険と相手方自賠責保険における二重取りと控除の仕組み

通勤中や業務中の交通事故では、相手方の自賠責保険と労災保険の双方に請求を行うことができます。

ただし、二重取り(ダブル受給)にならないよう給付内容の調整や控除が行われます。

ここでは、労災保険と自賠責保険を併用する際の手続きやメリットについて解説します。

労災保険と自賠責保険のどちらを優先して使うべきか

通勤中や仕事中の交通事故によって怪我をした場合、加害者側の自賠責保険だけでなく労災保険(労働者災害補償保険)も利用可能です。

双方の保険に請求手続きを行うこと自体は認められていますが、同一の損害項目について両方から全額を受け取る二重取りはできません。

どちらの保険を優先して請求すべきかについては、事故の状況や過失割合によって判断が異なります。

被害者側に過失がほとんどない過失ゼロの事故であれば、治療費の限度額や請求の手間を考慮して自賠責保険(加害者の任意保険による一括対応)を優先するのが一般的です。

一方で被害者側にも過失が存在する事故や、加害者が無保険の場合などは、労災保険を優先して使用することが推奨されます。

労災保険には過失相殺による減額がないため、自身の過失割合が大きい場合でも治療費や休業補償を全額カバーできるメリットがあります。

また自賠責保険の傷害上限額である120万円を超えて治療が長引くケースでも、労災保険を併用することで治療の継続がスムーズになります。

二重取りを防ぐための損害不支給調整と控除のルール

労災保険と自賠責保険の重複受給による二重取りを防止するため、法律上「損害不支給調整」という控除のルールが設けられています。

同じ事故による同じ損害項目(治療費、休業損害、障害補償など)について、既に一方の保険から給付を受けた場合、もう一方の保険からはその金額が差し引かれて支給されます。

例えば加害者の自賠責保険から治療費や休業損害が全額支払われている場合、労災保険から重ねて治療費や休業補償給付を受けることはできません。

逆に労災保険から先に休業補償給付(給付基礎日額の60パーセント)を受けた場合は、自賠責保険へ休業損害を請求する際に受給済みの金額が控除されます。

ただし控除対象となるのは、あくまで同一の目的・性質を持つ損害項目同士に限られます。

自賠責保険から支払われる入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は、精神的苦痛に対する補償であり労災保険には存在しない項目です。

そのため慰謝料については、労災保険の利用有無にかかわらず自賠責保険や相手方の任意保険へ全額を請求することができます。

労災保険の特別支給金が実質的に手厚い補償となる理由

労災保険を利用する最大のメリットの一つに「特別支給金」の存在が挙げられます。

労災保険から休業補償を受ける際、給付基礎日額の60パーセントに相当する休業補償給付に加えて、20パーセントに相当する「休業特別支給金」が支給されます。

この休業特別支給金は社会復帰を支援するための行政上の措置であり、損害賠償の性質を持たない給付として扱われます。

そのため自賠責保険や任意保険の賠償金から控除される対象にはならず、二重取り制限の例外としてそのまま受け取ることができます。

つまり自賠責保険から休業損害(原則100パーセント)を受け取りつつ、労災保険から休業特別支給金(20パーセント)を受け取ることで、実質的に合計120パーセント相当の給付を得ることが可能になります。

同様に障害補償や遺族補償においても特別支給金が別途設定されており、控除されずに受給できます。

通勤事故や業務災害に該当する場合は、特別支給金のメリットを活かすためにも労災保険の申請を検討することが非常に有効です。

交通事故の保険金を正しく多く受け取るためのポイント

不正な二重取りを行わなくても、適切な知識と手続きを踏むことで交通事故の補償額を最適化することは可能です。

通院頻度の維持や自身の保険の活用、示談交渉における適用基準の変更などにより、受け取れる補償金は大きく変化します。

ここでは、法的に正しい手順で補償額を最大化するための重要なポイントを解説します。

適切な通院頻度を維持して慰謝料を適正に請求する

交通事故で正しく十分な慰謝料を受け取るためには、医師の指示に従い適切な頻度で通院を継続することが基本となります。

仕事が忙しいなどの理由で通院間隔が空いてしまうと、実際の傷病状態にかかわらず完治したとみなされたり、治療の必要性を疑われたりするおそれがあります。

特に自賠責基準や任意保険会社の基準では、実通院日数が慰謝料の算定に直接影響を与えるため、極端に通院日数が少ないと慰謝料が大幅に減額されてしまいます。

週に2回から3回程度の適切なペースで規則正しく通院し、定期的な経過観察を受けることが重要です。

また、痛みが残っているにもかかわらず途中で自己判断により治療を中断してしまうと、本来請求できるはずの期間の慰謝料を失うことになります。

医師から治癒または症状固定の診断を受けるまで、計画的に通院実績を積み重ねることが適正な賠償金受領への第一歩となります。

自身に過失がある場合は人身傷害保険を活用する

交通事故において自身にも過失割合が存在する場合、相手方から支払われる賠償金はその過失分だけ減額される過失相殺が行われます。

例えば損害総額が200万円で自身の過失割合が3割だった場合、相手方から受け取れる金額は140万円に目減りしてしまいます。

このような過失相殺による目減り分をカバーするために非常に有効なのが、ご自身が加入している自動車保険の人身傷害保険です。

人身傷害保険はご自身の過失割合にかかわらず、実際の損害額に対して保険金が支払われる仕組みになっています。

過失相殺によって相手方から回収できなかった不十分な差額分について、自身の人身傷害保険へ請求して補填を受けることが可能です。

この補填は違法な二重取りではなく、損害額を100パーセント満たすための正規の補償手続きとなります。

ご自身の保険の契約内容を確認し、人身傷害保険の補償対象や請求方法について把握しておくことが賢明です。

弁護士基準での交渉により慰謝料の増額を目指す

交通事故の慰謝料を最も高く、かつ適正な水準で受け取るための確実な方法は、弁護士基準(裁判所基準)を用いて示談交渉を行うことです。

保険会社が提示してくる金額は、自賠責基準や各保険会社が独自に設けている任意保険基準に基づいていることが多く、弁護士基準に比べるとかなり低い金額に設定されています。

弁護士基準で請求を行うことで、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の額が自賠責基準の1.5倍から3倍近くまで増額されるケースも珍しくありません。

弁護士に交渉を依頼することで、保険会社からの早期治療打ち切りの打診に対しても論理的な対抗が可能となります。

ご自身の自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれるため実質的な負担なしで相談や依頼が可能です。

不当な金額で示談してしまう前に、弁護士基準での交渉を検討することが補償額最大化の鍵となります。

事故保険の二重取りに関して注意すべきトラブルと対処法

保険金の請求手続きにおいて意図せず重複受給になってしまうケースや保険会社との認識のズレによるトラブルが生じることがあります。

トラブルを避けるためには事前確認と適切な相談が欠かせません。

ここでは事故保険の請求でよくあるトラブルとその対処法について詳しく解説します。

保険会社同士の代位求償による過払い金の返還請求

交通事故の保険金請求において悪意がなかったとしても結果的に二重受け取りとなってしまった場合は大きなトラブルへ発展します。

保険会社は事故データの照会や代位求償と呼ばれる手続きを通じて過不足なく補償が行われているかを厳密に調査しています。

代位求償とは保険会社が被害者に保険金を支払った後に被害者が相手方に対して持っていた損害賠償請求権を代わりに取得して相手方保険会社に求償する仕組みです。

もし相手方の保険会社とご自身の保険会社の両方から同一の損害項目について二重に支払いを受けていた場合、後から過払い金の返還請求を受けることになります。

一度受け取った保険金を後から返還請求されると資金繰りや生活に大きな負担がかかることになります。

手続きを行う際はどの保険会社からどのような名目で保険金が支払われたのかを正確に記録し把握しておくことが未然のトラブル防止につながります。

自身の契約している特約の重複による保険料の無駄

事故保険の二重取りを避ける観点から見落とされがちなのが、ご自身やご家族が加入している自動車保険や火災保険における特約の重複です。

特に弁護士費用特約や個人賠償責任特約などは同居の親族がすでに加入している場合、重ねて加入しても補償対象が重複して二重に保険金が出ることはありません。

補償が二重に出て得をすることはないため、複数の自動車で同じ特約を個別に契約していると単に保険料を二重払いしていることになります。

事故が発生した際に二重受け取りができるか確認すると同時に日頃からご家族全体の保険契約内容を定期的に見直すことが大切です。

無駄な特約の重複を整理して一本化することで毎月の保険料負担を抑えることができます。

万が一の事態に備えつつ無駄のない効率的な保険契約を組み立てておくことが推奨されます。

判断に迷った際に弁護士や専門家へ相談するメリット

複数の保険が絡む交通事故ではどの保険をどの順番で請求すべきか、また二重受け取りにならないか等の判断が非常に複雑になります。

不慣れな個人が自己判断で請求手続きを進めると意図しない重複受給によるトラブルが発生したり請求漏れによって本来もらえるはずの給付金を失ったりするリスクがあります。

このような複雑な保険手続きや法律上の判断に迷った際は交通事故に詳しい弁護士などの専門家に早期相談することが最善の対処法です。

専門家に相談することで損害賠償の全体像を正確に把握し違法な二重請求を防ぎながら補償額を最適化するアドバイスを受けられます。

また保険会社との直接的な交渉や書類作成の手間もすべて代行してもらえるため精神的な負担も大幅に軽減されます。

損をせず安全かつ適正に補償を受け取るためにも不安を感じた時点で専門家のサポートを活用することをお勧めします。

事故保険の二重取りに関するまとめ

交通事故における事故保険の二重取りは、実際の損害額を超える受け取りを行うと利得禁止の原則に反し違法となります。

一方で、生命保険や傷害保険の定額給付金など、法律や約款上併給が認められている保険も存在します。

過失がある場合の補償や労災保険の特別支給金など、正しい仕組みを理解して活用すれば、違法な二重取りをしなくても手厚い補償を受けることが可能です。

保険金の請求や併用について判断に迷った場合は、弁護士などの専門家に相談して適切な助言を受けることがトラブルを防ぐ最善策となります。

正しく安全な手続きを進め、適正な補償金を受け取りましょう。

ABOUT ME
宮原璃央
鹿児島市鴨池で鹿大前整骨院を運営している、院長・柔道整復師の宮原璃央です。 交通事故後のむちうち、首・肩・腰の痛み、頭痛・めまい・しびれなどでお困りの方に対し、事故状況や症状の経過、身体の状態や動きを確認しながら施術を行っています。 鹿児島で交通事故後の身体の不調や通院先に迷っている方が、安心して相談できる整骨院を目指しています。