自賠責保険を使うとどうなる?等級への影響や人身事故での補償範囲を徹底解説
「自賠責保険使うとどうなる」でお悩みではないですか?
交通事故に遭って怪我をしたとき、相手の自賠責保険を使いたいけれど、それによって自分の保険料が上がってしまうのではないか、あるいはどのような補償が受けられるのか分からず不安になる方は非常に多いです。
自賠責保険は法律で加入が義務付けられている強制保険であり、被害者を救済するための独自の仕組みを持っています。
この記事では、交通事故の被害に遭った際に自賠責保険を使うとどうなるのか、等級や保険料への影響から、受け取れる補償の範囲、手続きの注意点まで専門的な視点から詳しく解説します。
自賠責保険を使うとどうなる?知っておくべき基本の仕組み
交通事故に遭った際、加害者が加入している自賠責保険を利用して怪我の治療費や慰謝料をまかないたいと考えるのは自然な流れです。
しかし、実際に自賠責保険を使うとなると、自分の自動車保険の等級が下がって毎月の保険料が高くなってしまうのではないかと不安を抱く方が少なくありません。
また、どのような事故であればこの保険が適用されるのか、その明確な基準を知らないまま手続きを進めようとして戸惑うケースも多く見られます。
自賠責保険の仕組みは一般的な任意保険とは根本的に異なるため、使うことで自分自身にどのような影響があるのか、まずは基本となる前提知識を正しく整理しておきましょう。
自賠責保険を使っても等級や保険料には影響しない
多くのドライバーが最も誤解しやすいポイントが、保険を使用した後の保険料の変動についてです。
結論から申し上げますと、交通事故の被害者として相手方の自賠責保険を使用した場合でも、あなたの自動車保険の等級が下がることはありませんし、それに伴って翌年からの保険料が値上がりすることも一切ありません。
自動車保険の等級制度は、加入者個人の事故リスクに応じて保険料を変動させる仕組みですが、これは民間企業が運営する任意保険に限ったルールです。
一方で自賠責保険は、法律によってすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険であり、国の被害者救済制度としての側面を強く持っています。
そのため、自賠責保険には等級という概念自体が存在せず、何度保険金が支払われたとしても保険料が一律で引き上げられるようなペナルティは課されません。
自分に過失がない事故はもちろんのこと、自分にも一定の落ち度がある事故であっても、相手の自賠責保険から治療費などの支払いを受けることによって自分の懐が痛むことは絶対にないため、安心して手続きを進めてください。
自賠責保険が適用されるのは人身事故の被害者のみ
自賠責保険を利用する上で絶対に忘れてはならない大原則が、この保険は人間の生命や身体に生じた損害、すなわち人身事故の被害を救済するためだけに存在しているという点です。
そのため、事故によって誰かが怪我をしたり亡くなったりした場合にしか、自賠責保険からお金が支払われることはありません。
具体的には、車同士が衝突して自分の車が激しく大破してしまったとしても、乗っていた全員が無傷であれば、その車の修理費用を相手の自賠責保険に請求することは不可能です。
どれだけ理不尽なぶつけられ方をしても、物に対する損害である物損事故は自賠責保険の対象外となります。
また、この保険はあくまで事故の被害者を守るための仕組みであるため、加害者本人が負った怪我の治療費なども基本的には支払われません。
自賠責保険を使うためには、警察への届け出を物損事故ではなく人身事故として処理してもらい、医師による診断書を通じて身体に怪我を負った事実を客観的に証明することが必須の条件となります。
自賠責保険を使用するメリットと受け取れる補償内容
交通事故の被害に遭って怪我をした場合、相手方の自賠責保険からどのような補償が受けられるのかを具体的に知ることは、安心して治療に専念するために極めて重要です。
自賠責保険は、被害者が最低限の補償を迅速に受けられるように設計されており、任意保険とは異なる独自の基準に基づいて損害額が算出されます。
受け取れる主な補償は、治療費、慰謝料、休業損害の3つの柱から成り立っており、これらは被害者の経済的な負担や精神的な苦痛を直接的にサポートするものとなります。
治療費や通院交通費などの実費が補償される
交通事故による怪我の治療にかかった費用は、自賠責保険の補償対象として実費が全額支払われます。
これには、整形外科や整骨院などの医療機関での診察料、投薬料、手術料、処置料だけでなく、医師が必要と認めた場合のレントゲンやMRIなどの検査費用、診断書の発行手数料などもすべて含まれます。
また、病院に通うために必要となった通院交通費も補償の対象です。
電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合はその実費が支払われ、マイカーを通院に使用した場合には規定のガソリン代や往復の有料道路料金、駐車料金が支給されます。
さらに、怪我の程度が重く公共交通機関での移動が困難な場合や、足を骨折して歩けないといった客観的な理由がある場合には、タクシーの利用代金が認められることもあります。
これらの費用を請求するためには、領収書や通院日数の正確な記録が必要となるため、日頃からしっかりと保管しておくことが大切です。
精神的苦痛に対する入通院慰謝料が支払われる
自賠責保険を使用する大きなメリットの一つが、事故によって負った肉体的・精神的な苦痛に対して支払われる入通院慰謝料です。
これは物損事故では決して認められない人身事故特有の補償であり、被害者の心の負担を和らげるための迷惑料としての役割も果たします。
自賠責保険における慰謝料の計算方法は法律で明確に定められており、原則として通院1日あたり4300円が支給されます。
ただし、通院した日数すべてに対して機械的に支払われるわけではなく、治療期間と実際の通院日数を考慮した計算式が適用されます。
具体的には、治療開始から終了までの総治療期間の日数と、実際に病院に通った日数を2倍した日数を比較し、どちらか少ない方の日数に4300円を掛け算した金額が最終的な慰謝料として算出されます。
そのため、痛みを我慢して通院を長期間怠ってしまうと、実際の通院日数が少なくなってしまい、受け取れる慰謝料の額が大幅に減ってしまう可能性があるため注意が必要です。
怪我で仕事を休んだ場合の休業損害も補填される
交通事故の怪我が原因で仕事を休まざるを得なくなり、それによって収入が減少してしまった場合には、その減収分を補填するための休業損害を請求することができます。
これにより、治療期間中の生活費の心配をすることなく、身体を休めることに集中できるようになります。
自賠責保険における休業損害は、原則として1日あたり6100円が支給されます。
会社員やパート、アルバイトなどの給与所得者の場合は、勤め先に休業損害証明書を記載してもらい、事故前の給与額や実際に休んだ日数を証明することで、この金額または実損額に基づいた補償が受けられます。
また、見落とされがちなポイントとして、専業主婦や主夫といった家事従事者であっても休業損害を請求する権利があります。
主婦の家事労働には経済的な価値があると認められているため、怪我のために家事ができなかった日数に対して、会社員と同様に1日あたり6100円の休業損害が支払われます。
もし実際の収入が日給換算で6100円を明確に超えることを証明できる場合は、最大で1日あたり19000円を限度として実額が認められるケースもあります。
自賠責保険を使う際の注意点と補償の限度額
自賠責保険は交通事故の被害者を守るための非常に手厚い制度ですが、決して万能なわけではありません。
支払われる保険金には法律で定められた明確な上限が設けられており、その枠を超えた場合の扱いについてもあらかじめ知っておく必要があります。
また、過失割合に応じた独自の減額基準や、対象外となる損害など、民間企業の任意保険とは大きく異なるルールが存在します。
後になってこんなはずではなかったと後悔しないために、利用する上での重要な注意点と制限について詳しく見ていきましょう。
傷害分の補償は被害者1人につき最大120万円まで
自賠責保険において、怪我による損害、すなわち傷害分に対する保険金の支払限度額は、被害者1人につき一律で最大120万円と定められています。
この120万円という枠の中には、これまで解説した治療費や通院交通費などの実費、入通院慰謝料、そして仕事を休んだことによる休業損害のすべてが含まれます。
つまり、どれだけ大きな怪我をして長期の通院が必要になったとしても、これらの合計額が120万円に達した時点で自賠責保険からの支払いはストップしてしまいます。
もし治療の途中で上限に達してしまった場合、超えた分の費用は加害者が加入している任意保険会社が引き継いで支払う一括対応が行われるのが一般的です。
しかし、加害者が任意保険に加入していない無保険車であった場合は、超えた分を正当に加害者個人へ直接請求するか、あるいは被害者自身が加入している人身傷害補償保険などを利用してカバーしなければならなくなるため、限度額の残高には常に注意を払う必要があります。
過失割合が大きくても重大な過失がなければ減額されない
一般的な任意保険の示談交渉では、被害者側にも不注意があった場合に過失割合に応じて受け取れる賠償金が差し引かれる過失相殺が行われます。
しかし、自賠責保険は被害者救済を第一の目的としているため、被害者に多少の落ち度があっても原則として減額されることはありません。
ただし、被害者側に重大な過失があると認められた場合に限り、例外的に一定の割合で保険金が減額される重過失減額という独自のルールが存在します。
傷害事案における具体的な基準としては、被害者の過失割合が7割未満であれば一切減額されません。
過失割合が7割以上8割未満の場合は2割減額、8割以上9割未満の場合は3割減額、9割以上の場合は5割減額となります。
裏を返せば、被害者の過失が7割未満という大半のケースにおいては、任意保険のように細かく賠償金を削られることなく、限度額までは全額の補償を受けられるという点が自賠責保険の大きな強みと言えます。
物損事故の車の修理費には一切使えない
自賠責保険の仕組みを理解する上で、最も徹底しなければならないのが物に対する損害の扱いです。
繰り返しになりますが、自賠責保険は自動車損害賠償保障法に基づき、他人の生命または身体を害したことによって生じた損害を賠償するための強制保険です。
そのため、事故によって愛車がどれだけ無残に壊れてしまっても、ガードレールや店舗の壁などの財物を破損させてしまったとしても、その修理費用や買い替え費用として自賠責保険から1円も支払われることはありません。
過失割合が10対0の物損事故であっても、物に対する賠償はすべて加害者側の任意保険、あるいは加害者個人の財産から支払われることになります。
もし相手が無保険であれば、物損の被害回復は非常に困難な交渉を強いられることになるため、被害者自身が車両保険に入っておくなどの自己防衛も重要になってきます。
自賠責保険の手続き方法と請求の流れ
交通事故の被害に遭って自賠責保険を利用する場合、具体的にどのような手順で請求手続きが進んでいくのかを知っておくことは、トラブルのない円滑な解決のために非常に重要です。
自賠責保険の請求方法には、大きく分けて加害者側の任意保険会社に手続きを委ねる方法と、被害者自身が主導して直接請求を行う方法の2種類が存在します。
それぞれの特徴やメリット、デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
相手の保険会社に一括対応してもらう事前認定
交通事故の手続きにおいて、最も一般的であり被害者の手間が少ないのが、相手方の任意保険会社に窓口を一括してもらう事前認定という方法です。
これは一括対応とも呼ばれ、被害者が病院で治療を受ける際、窓口での支払いを自己負担することなく、保険会社が直接病院へ治療費を支払う仕組みを指します。
この手続きを選択した場合、被害者は事故後に相手の保険担当者に通院する病院の情報を伝えるだけで済みます。
その後は、保険会社が自賠責保険への請求手続きや必要書類の収集をすべて代行してくれるため、被害者自身が複雑な書類を作成したり、何度も郵送手続きを行ったりする労力はほとんどかかりません。
治療が終了した段階で、自賠責保険の傷害分である120万円の枠を含めた最終的な示談金が任意保険会社から一括して提示されます。
手間の面では非常に優れた方法ですが、すべての手続きが相手方のペースで進むため、どのような書類が提出されているか被害者側で見えにくいという側面もあります。
被害者自身が直接請求する被害者請求の手続き
事前認定とは対照的に、加害者側の自賠責保険会社に対して被害者自身が直接保険金の請求を行う方法を被害者請求と呼びます。
この手続きは自動車損害賠償保障法第16条に定められた正当な権利であり、相手方の保険会社との交渉が難航している場合や、相手が無保険である場合に極めて有効な手段となります。
被害者請求の最大のメリットは、手続きの透明性と迅速性にあります。被害者自身が診断書や診療報酬明細書、事故証明書などの必要書類をすべて揃えて提出するため、どのような内容で審査が行われるかを完全に把握することができます。
また、示談交渉が成立する前であっても、治療費や休業損害などの確定した損害分を先払いの形で受け取ることができるため、治療期間中の経済的な不安を早期に解消することが可能です。
ただし、医師から診断書を取り寄せたり、多くの公的書類を集めたりする手間がすべて自分にかかってくるため、一定の知識と時間的余裕が必要になる点がデメリットと言えます。
交通事故で自賠責保険を使うとどうなるかを理解して正当な補償を
交通事故に遭った際、自賠責保険を使うとどうなるのかという不安を解消することは、被害者としての正当な権利を守るための第一歩となります。
自賠責保険はご自身の保険料や等級に一切の悪影響を与えない強制保険であり、怪我をした人身事故の被害者を迅速に救済するために国が定めた非常に心強い制度です。
治療費や通院交通費の実費だけでなく、精神的苦痛を補填する入通院慰謝料や仕事を休んだ場合の休業損害まで、被害者一人につき最大120万円の範囲内で手厚い補償を受け取ることができます。
手続きの進め方には、相手の保険会社に一任して手間を省く事前認定と、自ら主導して透明性を高く保てる被害者請求の二通りが存在します。
物損事故の車の修理費には使えない点や限度額の壁といった注意点はありますが、正しい知識を身につけて冷静に対応すれば、理不尽な泣き寝入りを防ぐことが可能です。
万が一、相手方の保険会社との交渉に少しでも不安がある場合は弁護士特約の活用なども視野に入れながら、まずは怪我の治療を最優先にし、正当な損害賠償金の獲得を目指していきましょう。
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